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いつもみたいにセーブするような飲み方はできなくて、ホッピーを無茶苦茶に煽った。
ここのホッピーは焼酎を凍らせたものを氷として使っていて、時間が経って氷が溶けていくほど濃くなっていくのが最大の特徴だった。つまりは安くて酔える飲み物。自棄になっていた俺にはちょうど良かった。一気飲みすればいつもとそんなに変わらないのだけれど、残った焼酎氷を新しいジョッキに移して飲んでいるうちにいい感じに酔ってきた。
このまま苦しみや悲しみを飲み干して、ほろ酔いのいい気分だけ残したい。頼さんと一緒にいられる幸せだけを胸にしまっておきたい。そんなことを思った。
頼さんを独り占めしようなんて、贅沢だから。俺には過ぎた夢だから。
頼さんもどんどんジョッキを空けていった。
かなり強いお酒なんだけど、酔わないんだろうか――――?
そう思った矢先に、急に頼さんの目がトロンとなった。
『ねぇ頼さん、知ってます?』
俺も酔っていた。ついつい久しぶりに名前で呼んでしまったりして。
『そのホッピーね、氷が焼酎だからすごく強いんですよ。気を付けて飲まないと』
俺の忠告はあまりに遅かったらしい。頼さんはトロンとした目付きのまま、急にテーブルに突っ伏してしまった。
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