2626人が本棚に入れています
本棚に追加
/292ページ
ホテルでシャワーを浴びたのは、酔っていたところに筋肉質な頼さんを抱えて歩いて汗をかいたからだ。それに、たぶん帰りは夜中になるだろうから、家に帰ってからシャワーを浴びるのが面倒だっただけで……。
頭の中であれやこれやと理由を付けてはみたけれど、どれも言い訳がましかった。下心が全くないと言ったらたぶん嘘になる。均等な寝息を立てる頼さんの唇に何度口付けたくなったかわからないし、力の入っていない身体を何度抱きすくめたくなったかわからない。だけど、正当な理由は後付けでもいいのだ。目を覚ました頼さんを無事に送り届けられたなら――――。
頼さんが目覚めたのは、よりにもよって最悪なタイミングだった。俺がシャワーを浴びて上半身裸で浴室から出たときに、頼さんは怯えたような瞳で俺を見つめていたのだ。
本当に、そのときまで何もするつもりはなかった。きちんと話して、酔いを覚まして送り届けるつもりだった。今日は酔い潰れたけど楽しかった、そういう思い出をいつまでも話せるような仲でいたかった。それなのに――――。
怯える瞳にグラッときた。
煽られているような気がした。
強い頼さん。頼りになる、大人な頼さん。
頼さんは俺を守ってくれる存在だったはずなのに。
どうしてそんな目で俺を見るの――――?
最初のコメントを投稿しよう!