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俺が守ってあげたい――――。
頼さんに対してそう思ったのは初めてのことだった。
酔い潰れてしまう程に仕事で疲れている頼さん。好きな人に思いを伝えられない頼さん。報われない片想いをしている頼さん――――。
切ないよね? 苦しいよね? 俺も同じだよ。
みんなみんな、忘れさせてあげたくなった。
弱々しい瞳で俺を見つめるその姿に、俺は全てを擲ってでも苦しみから解き放ってあげたい、傍にいてあげたい、そう思ったんだ。
水をあげる、と唇を奪った。
いとも簡単に、唇が開く。俺の舌の侵入をあっさりと許す頼さんの短い呼吸が何だかとてもいやらしく感じた。
『止めろ』と俺を突き返す腕も、何だか全然力が入っていなくて。本当に嫌がって全力で拒否している気がしなかった。
きっと頼さんも本心では忘れたいのだろう――――。
頼さんを好きで好きで仕方なくて許されたい俺は都合のいい自分勝手な解釈をした。
頼さんは俺の生きる希望だった。頼さんだけが俺を救ってくれた。頼さんだけが俺をわかってくれた。
俺は頼さんが大好きだった。
頼さんが他の誰かを愛していても、忘れさせてあげるという大義名分で滅茶苦茶に抱いてしまいたくなる程に。
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