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 5年経って、頼さんの知っている少年は消えてしまったんだ。ここにいるのは、ただただ頼さんだけを愛する1人の可哀想な男。父という大きな存在に捨てられて変わってしまった、孤独で身勝手な男なんだ。頼さんなしでは生きていけないと、いつの間にか依存してた。  頼さんに、俺の爪痕を残したい。消えない存在になりたい。例えそれが恨みの感情でも。  だって、消えてしまうって一番悲しいもの。父の中から俺や母の存在が消えてしまったように、忘れ去られるというのが何よりもつらいことだから。  中途半端に受け入れないで。俺を心に深く刻みつけて――――。  頼さんは、俺が今まで見てきたどんな人よりも美しかった。  精悍で、女では決して得られない汗の香りや筋肉のしなやかさがあった。  張りのある肌に歯を立てて吸い付けば、頼さんは身体を仰け反らせて“あぁぁっ”と啼く。欲望のままに紅い印をあちらこちらに刻んではみるけれど、いつまでも満足できなかった。俺の頼さん、俺だけの頼さんになって欲しいと願うのに、それは叶わないからなのだろう。  抱き締めると骨まで軋みそうな程、力強く抱き締め返される。  抱いている、俺たちはセックスしているのだ、生きているのだと実感できる時間だった。
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