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 俺は頼さんを力で押さえつけて犯しているはずなのに、なぜだか愛し合っていると錯覚した。それは夢、幻の世界であって、俺だけの歪んだ愛が暴走しているだけなのに。  だけど、俺は精一杯愛した。  暴力をもって征服するのではなく、愛で息ができない程に頼さんの身体を埋め尽くした。それは愛し合っている恋人にするように、ときに優しくときに強くするキスと愛撫で頼さんの身体に悦びを与えたくて。  頼さんの一つ一つが愛おしい。  愛撫のたびに漏れる甘い息や喘ぐ声も、ビクビクと敏感に震える身体も、必死に俺の首に絡み付けてくる逞しい腕も、滑らかな日焼けした肌も、綺麗な歯並びが覗く少し大きめの口元も。腰を動かすたびに流れ、滴り落ちる汗さえも愛しい。  何もかも、好きで好きで堪らなかった。  だから―――― 『もう二度と俺に近付くな』  夢から現実に戻ってきたとき、俺は自分のしたことに心底後悔した。  恨みの感情でもいいから俺を頼さんの心の中に入れて欲しい、そう思ってたはずなのに。頼さんが一度も振り返らずに出て行く後ろ姿を見て、俺の胸は何かでえぐられたみたいに痛くなったのだ。
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