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頼さん、こんなバカな俺でごめんなさい。
最後に頼さんの家に行ったのは、どうしても面と向かって謝りたかったからだ。
きっと早退したあの人は傷ついて眠ることも食べることもできていないに違いない。何か理由を付けて食べ物や飲み物を持って行ってあげなければ。武川さんに頼さんのアパートの場所を聞いた。
最後の“愛の告白”をしよう。
告白のときにした最後のキスで、全てがわかった気がした。
やっぱり頼さんのことはずっと好きだし諦められない。でも、それは俺の一方的な思い。頼さんの心が欲しくて堪らなくても、絶対に叶わない。
だって、恐怖っていうのは嫌いとか恨みの感情よりも“好き”の対極にいるものだと思うから。
例えそれが苦しくとも、それは俺に対する罰なのだ。諦められなくても、二度と頼さんに振り向いてもらえない。そう割り切って生きていくしかない。
あとは仕事に向き合う。
もうきっと謝る機会はないけれど、心ではずっと自分を責めつづけるだろう。
だから、もう頼さんには楽になってもらいたい。
でも、一つだけ。
電話番号を残しておくことだけは許して欲しい。最後のわがまま。それだけが俺の生きる力なんだ――――。
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