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「……部長……柏倉部長!!」 「…………あ?」  パソコンの画面から顔を上げると、武川が俺の目の前で手を振っていた。起きてるか、気は確かかと言わんばかりの激しい動きだ。 「“あ?”じゃないですよ!! 本当に大丈夫なんですか?! まだ体調不良とか?」 「…………いや、体調はすこぶるいいよ。この3日間めちゃくちゃ寝たし」 「もー!! だったら何なんですか?! ずっと考え事してるし変ですよ!?」 「……そうか? 集中してるつもりだけど」 「上司に言うのもなんですけど、全然ですよ。全然集中してる感ないです。どう見ても上の空です」  随分ズバズバと言われたが、その通りなので全く言い返す気にならない。むしろ上司として申し訳ないくらいだ。  刑事として仕事に私情は持ち込んではいけないと昔から口酸っぱく言われてきたのに。情けないものだ。普通は十代、二十代で経験するであろう色恋のアレコレを三十をとうに過ぎた俺が今さらウジウジと悩んでいる。  何せわからないことだらけなのだ。こんなに人から執着されたことは初めてだし、ましてや男に抱かれたことも初めてであって。その後に改めて告白されたけれど、今度は俺への諦めきれないと言いながらも諦めたようによそよそしい態度になった。全くもって理解不能だ。  押したら引くとかそんなヤツなの? だけど駆け引きにしちゃチグハグな気がする。……というか下手過ぎないか? いきなり抱くなんて押し過ぎだろう。引き方だって唐突過ぎるだろう。そのくせ、差し入れなんて置いていきやがって。変に優しさを見せてくる。
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