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 うん、全然理解できない。アイツの頭の中はどうなってるのか覗いてみたいくらいだ。  俺がこんなにも悩ませられているというのに、当の本人は何食わぬ顔で今日出勤してきている。  金、土、日と休んで久々に出勤したら、いつもと変わらない微笑みを浮かべたアイツにお茶を出されたので心臓が止まるかと思った。何で平然としていられるのかわからない。いや、めちゃくちゃ態度に出されても困るけど。何だかウジウジしてる俺の方がガキみたいで癪に触るのだ。そもそもそのウジウジの原因はアイツだというのに。    とりあえず、武川に喝を入れてもらったことだし集中するとしよう。いい加減に仕事モードに切り替えなくては。こうやって俺だけが悩んでても何も解決しやしないのだから。 「……悪かった。ちゃんと集中するよ。……じゃあ、まずそっちのファイル取ってくれるか? その防犯カメラ精査の入ってるヤツ」 「…………結城部長が来るからですか?」  武川は手慣れた様子で数あるファイルから1冊を抜き出すと、それを手渡しながら俺に小声で問い掛けてきた。  少し眉尻を下げていて、いかにも心配している表情だ。武川は俺が結城部長に思いを寄せているのを知っている。それだけに、俺の様子のおかしさが心配なのだろう。 「普段はそんなに心乱さないじゃないですか。柏倉部長がそこまで動揺するのって、やっぱり……」
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