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 だけど、さ―――― 「……完璧な人間なんていねぇよ」  俺は書類から視線を動かさず、浅見を貶す訳ではなく庇うようにそう言った。何となく、そう思ったから口にした。  浅見はそうやっていつも周りから完璧を求められてきて、それを頑張って体現してきたはずで。しかもそれが嫉妬の対象にもなって。苛められたりもしてた。だけどきっと、浅見だって弱さを見せたいときもあったんじゃないのかな。気を抜きたいときもあったんじゃないのかな。  ……可笑しいよな。犯されたっていうのに、俺は何でこんなに浅見に肩入れして庇ってるのかね。思わず苦笑してしまう。  武川のうちわを扇ぐ手が止まる。 「……どうしたんすか、急に」 「……別に何でもねぇけど。いやさ、浅見だって何かしらは弱点があったりするもんだろ」 「えー、あるんですかね。例えば?」 「例えばって言われても困るけど」 「何か知ってるみたいだったから」 「…………いや、知らねぇけど」  俺が書類に目を向けたままそう言うと、武川は「ふぅん」と言って微かに笑った。  意味深に笑われると何か気付かれたんじゃないかってドキドキする。いや、わかるはずもないんだけどさ。
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