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「……知り合いって程でもねぇよ。昔、アイツが不良に絡まれてるところを助けたことがあって。それがきっかけでアイツは警察官になったんだ」  俺が端的にかいつまんで説明すると、武川は更に身を乗り出してきた。 「えっ……それって普通に考えてすごくないっすか?! だって、浅見の人生変えちゃう出来事ですよね? 今回の再会は運命的な感じじゃないですか!!」  武川は興奮しているようで鼻息を荒くしながらそう言った。  おいおい、武川……何言ってくれてるんだ。俺が好きな結城部長の前で何“運命的”とか言ってくれちゃってるの? そこは一番触れられたくないところな訳で。刑事ならそのくらいの空気は読めよ、と言いたくなってしまう訳で。  けれど、俺の意思に反して結城部長もその話に乗ってきた。 「あのときの高校生か……。律儀にその後に警察官になるなんて……柏倉、慕われてるんじゃないか」  ……わかってる。結城部長の言葉には他意も悪意もないんだって。  慕われてるっていうのは、別に恋心とかそういうのじゃなくて、同性への強さに対する憧れだったりそういうことを指すことくらい、わかってる。わかってるけど―――― 「……どうなんでしょうね? 就職するのに安定を取っただけじゃないですか?」  苦しくて、思ってもいないことを口にする。  ――――本当はわかってるんだ。  浅見が、どれ程の思いで官僚でもないただの警察官を志したか。
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