君の心に住む人は

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「「結婚おめでとーーー!!」」  みんな一斉に声を高々にそう言って、持っていたグラスをガチャンガチャンとぶつけ合った。男しかいないからか、割りと激しめの乾杯だ。 「皆さん、今日はありがとうございま……」  俺がそこまで言ったとき、カウンターの中にいた人物が勢いよく飛び出してきた。 「ちょっとぉぉッッ!! グラス割れるわっ!! もう少し優しく乾杯しなさいよっ!!」 「まぁまぁローズママ、おめでたい席なんだから細かいことは言わないで、ねっ」 「井上ちゃんが一番激しかったわよ!! 調子に乗るなっ」 「今日貸切なんだからさぁ、サービスしてね」 「調子に乗るなって言ってるそばから調子に乗ってくるスタイルなのね?」  俺は2人のやりとりに苦笑してしまう。  紫色のアフロと濃すぎる化粧がインパクト大なローズママなる人と、井上ちゃんと呼ばれたガッチリ体型の男性。今日はなかなかにキャラの濃い人物が揃っているようだ。  そして一応、頼さんと僕の結婚式のようなもののはずなんだけど……なぜか“アムール”という古いスナックでパーティーが始まっていた。 「ママ、騒がしくするけどごめんね!! 今日はよろしく!!」 「あら、柏倉。すっかり男になっちゃって。結婚おめでと」 「うん、ありがとう。……つーか呼び捨てかよ!!」  頼さんまで親しそうにローズママと話している。前から知り合いみたいだ。  行きつけの店? 何なの? 全然聞いたことなかったけど。昨日だっていろいろ聞いたのに『行ってからのお楽しみ』とか全然事前に情報入れてくれなかったよね。 「それにしても……とんでもなくキレイなコを捕まえたわねぇ」  突然、ローズママの視線が俺へと向けられた。舐めるように上から下まで見られて、ついついたじろいでしまった。普段から女性でも男性でも見つめられるのは慣れているのだけれど、このどちらとも言えない謎の人物に見つめられるのは初めての経験だった。 「大丈夫よ、捕って食いやしないから。アタシはここのママしてるローズ。ローズママって呼んで」 「……あ、はい。浅見律です。今日はよろしくお願いします、ローズママ」  少し冷静さを取り戻して俺はニコリと人当たり良く微笑んだ。 「はぁぁ……その笑顔だと誰でも骨抜きでしょ? しかも若いし」 「あはは、そんなことないですよ。ちなみに頼さんとは10才差です」 「そうなのねぇ~……ってヨリさん?! 柏倉、アンタの名前初めて知ったわよ」 「だって言ってねぇもん。恥ずかしい名前だからあんまり言いたくないんだよ」 「何よそれ~」 「……名前で呼んでいいのは律だけなんだよ」  さりげなく頼さんはそう言って俺の肩を抱いた。  こういうところが本当に狡い。アウェイ感が強くて少し拗ねてたのに、ご機嫌とりされたみたいで。まぁ、頼さんは俺が拗ねてるなんて知らないんだろうから俺の勝手な思い込みなんだけど。 「かぁぁぁぁッッ……!! ノロケで胸焼けしそうだわっ!!」  ローズママはわざとらしく額に手を当てて仰け反った。
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