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何であんなことをしてしまったのだろう――――。
過去には戻れないのだし考えるだけ無駄だが、考えずにはいられない。
浅見の誘いを断れなかったことから悔やめばいいのか、飲みに行ったことが悪かったのか、それとも飲み過ぎて意識を失ったのが元凶なのか、もはや何だかわからないけれど。
「……あ、アイツやりやがった……」
俺が思わず独り言を呟いたのは、鏡に映る自分の胸元に赤い印が数ヶ所刻まれているのを発見したからだ。
“頼さん……あなたを俺だけのものにしたい……”
浅見は切なげな笑みを浮かべた後、俺の胸元に顔を埋めた。
俺は肯定の台詞も言わなかったが、拒みもしなかった。あのとき俺はおかしくなってたんだ。まるで熱に浮かされてみたいに。
こんなキスマークを付けられていたことさえ気付かなくて、ただただ感じるままに抱かれてた。
浅見の言葉一つ一つが俺の中にすっと染み込んでいった。
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