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「……あー、もう嫌だ……休みたい……」
身体の怠さもある。
でもそれ以上に、どんな顔をして出勤していいかわからない。
昨日までの俺とは違う。俺は好きでもない男に抱かれていやらしく喘いでいた淫乱だ。
どんな顔をして刑事の仕事をしろって言うんだ?
検視とか火災があったら着替えるだろうし、胸のキスマークを見られるかもしれない。
それに浅見に会うかもしれない。どんな顔して挨拶しろって言うの?
だけど俺は、心とは裏腹に身体を引きずるようにしながらも身支度を整え始めていた。
刑事としてのプライド。よっぽどのことがない限り刑事は年がら年中仕事をする。
新人の頃はよく“這ってでも来い”って言われてたから、癖みたいなものだ。
今がよっぽどなことなんじゃないのっても思うけど、今日休んで浅見に何か思われても嫌だし。いや、反省してもらわなきゃ困るんだけどさ。
寝起きで汗をかいていた身体をぬるめのシャワーで流せば、少し落ち着いてきた。
眉間をすっと人差し指で撫でる。いつもここに力が入っていて疲れるから、ここを擦ってリラックスするようにしてる。
忘れよう。あれは悪い夢だ。何もなかった、そうだろう?
俺はそう何回も心で唱え、自分を信じ込ませようと努力した。
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