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 結局いつもどおり出勤して刑事課の部屋に入ると、挨拶もそこそこにすぐさま机に突っ伏した。  誰とも顔を合わせたくないし話したくない。就業時間まで寝たふりをしていよう。 「柏倉部長、おはようございます!!」 「……あ、おはよう」  名指しで挨拶されたので無視できずに顔を上げると、俺のマグカップを持った武川がすぐ傍に立っていた。  今日は武川の笑顔が眩しすぎて直視できない。  羨ましくて堪らないのだ。好きな人と結ばれ、好きな人との日々を過ごしている武川が。  忘れたい忘れたいと思うほど昨日のことを思い出してしまって、好きな人と幸せに過ごしている武川との違いを思い知らされるのだ。 「コーヒー、どうぞ」 「ありがとな」 「……大丈夫ですか? 顔色が悪い」 「あ……ちょっと疲れ気味で……」 「そんなこと言うの、珍しいですね。相当お疲れなんじゃないですか? 」  武川が心配そうに眉を潜めて俺の顔を覗きこむ。
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