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 言い様のない感情に飲み込まれ、俺は視線を外した。 「……大丈夫だ。仕事始まるまで少し寝てるから」 「そうですか……。あんまり無理しないでくださいね」  武川が完全な良心で俺を心配してくれているのはわかっていた。  そんな武川を今の俺の濁った心のままで見つめるのは忍びなかった。俺の中でアイツの存在が薄くなるまでは、きちんと目を見て話せない気がする。一方的な嫉妬の感情を押し付ける訳にはいかないのだから。  机に突っ伏して強く瞼を閉じる。  暗闇の中に見えるのはやっぱりあの男で。早く消えて欲しいと願うのに、昨日のことが今もリアルに瞼に浮かぶのだ。  すると、仕事が始まる30分も前だというのに俺の班の電話が鳴り響いた。  警察の仕事は全て定時とはいかないので、こういうことは時たまある。けれど、なぜよりによって今日なのか。まだ顔を上げる気力はないっていうのに。 「……はい、強行班武川です!!」  俺がぐちゃぐちゃ考えている間に武川が電話に出てくれた。助かった、あと少しだけ心の整理をする時間が欲しい。 「……え?! お久しぶりです~!! 俺、武川です。武川蒼!! はい、はい、そうなんですよ~……」  どうやら武川の知り合いみたいだ。
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