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『久しぶりだな』
何で、何で、よりによって今日なんだ。
どうして、どうして、もっと早く電話をくれなかったんだ――――
俺はあまりに自分本位な考えで頭がいっぱいになった。あまりに、あまりに最悪なタイミングだった。
「……お久しぶりです」
『……何かあったのか? 元気ないみたいだけど』
結城部長には声だけで全てわかってしまう。俺がわかりやす過ぎるくらい動揺してるだけなのかもしれないけど。
それに、結城部長とはずっと一緒にいたから。相棒として何年もずっと隣にいたから、俺のことならわかってしまうんだ……俺はそう思ってる。
結城部長が俺のことでわからないものはたった一つだ。
『いつも明るいおまえに元気がないと心配だ』
そう、たった一つ。
――――俺が結城部長に抱いている、恋愛感情。
今、優しくしないでくれ。
今の俺は浅見のせいでボロボロの精神状態だから。
好きでもない男に抱かれて、好きな男に優しくされる――――苦しくて仕方ない。
――――ねぇ、結城部長。
どうして、俺じゃ駄目なんですか。
諦めかけていた感情が俺の心に靄のようにかかる。
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