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「大丈夫……大丈夫です。少し、疲れてて……」
何とか声を絞り出した。
いつも笑って気持ちを隠してきた。距離を置かれるくらいなら隠し通していた方がましだった。
だけど、今は上手く笑えない。
そうだ、最初から自分の気持ちなんてわかっていたじゃないか。
アイツじゃない。
俺は結城部長に抱かれたかったんだ――――
『……本当に大丈夫なのか? そっちの事件のことで話したいことがあったんだけど……係長に言った方がいいか?』
「あ……いえ、本当に大丈夫なんで話してください」
くすぶるどうしようもない感情。
俺の醜い欲望は、叶うはずもなく俺の頭の中で浅見との情事にすり変わり、何度も繰り返し再生されるだけ。
虚しかった。結城部長の声を聞けば尚更、浅見とのことが悔やまれる。
仕事に集中しないといけないのに。アイツに心を掻き乱される。
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