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「……いやぁ、若いのに大したもんだ」
田中係長がそう言って唸った。
休みを返上してまで勉強したいと申し出た浅見を、今の若者にしては珍しく骨のあるヤツだと認めたのだろう。
浅見は仕事に命を懸けている昔気質の刑事をも取り込んだ。
――――つまり俺は、ヤツを表立って責めることはできない。
一体どこまでが計算なのか。普通の出来の頭じゃ全くわからない。
今の浅見は、好青年のテンプレートの爽やかな笑みを浮かべている。そこから裏の顔を読み取るなんて不可能だ。
「じゃあ浅見くん、早速だけど近日中にうちに強盗事件の対策室ができるから、そこでいろいろ勉強するといいんじゃないか。本部の捜査一課の人間も来るし、きっといい経験になる。だけどくれぐれも邪魔にならないように」
俺は膝から崩れ落ちそうになった。思わぬ課長の提案に頭が真っ白になる。
待ってくれ。その対策室だけは――――
「……ありがとうございます!! 頑張りますので、ぜひやらせてください!!」
浅見は課長に元気良く挨拶した後、颯爽と踵を返した。
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