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堂々と歩く姿を、ただ見つめるだけの俺。
きっと、顔色は相当悪い。だって気分も悪いから。
ここで今日初めて、浅見と目が合った。
浅見がにっこりと微笑む。けれど、それはもう好青年のそれではなくて――――
『俺が忘れさせてあげますから、俺に抱かれてください』
俺には、“逃さない”という獲物を狙うハンターの表情にしか見えなかった。
浅見が怖い。
だけど、やっぱり憎みきることはできない。
情に弱い、お人好しのバカな俺。
時折見せる哀しげな表情を忘れられないからだ。
どこまでが計算で、どこまでが本当の浅見なのか。
俺は、身体を重ねた男のことを、まだ何も知らない。
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