2/12
前へ
/292ページ
次へ
『何でも持っていていいね。それに望めば何でも手に入るでしょう?』  生まれてこの方、何度そういうことを言われたかわからない。  望めば何でも手に入るって? 俺がいろいろなものを手に入れてるのはそれなりに努力しているからだよ。君たちが手に入れられないのは努力が足りないからだ。それすらわからないの? 一体、俺の何を知っているの?  まぁそう思ってみたところで、ただの嫌味にしかならないのはわかっている。常に嫉妬されたりやっかまれる立場にいることも、重々承知している。  だから言い返したりしないよ。“全て手に入るなんて羨ましい”と言われたら、黙ってにっこり微笑むんだ。謙遜すら嫌味と捉えられたら敵わない。  他人から見たら、俺はかなり恵まれているのだろう。それも中途半端な恵まれ方じゃなくて、生まれながらにして勝ち組とか言われるその手の。  父親は国会議員で、母は資産家。父方祖父母、母方祖父母を見てもそうそうたる肩書きばかりで、良く言う“名家”とか“華麗なる一族”とか、そんな感じ。  つまりは自分の出自を話すだけで嫌味と言われる、俺はそんな存在だ。  だからこそ、俺は何でも人に頼らずやってきたつもりだ。  親の力を絶対に利用しない、とにかく真面目に真摯に生きようと、そう決めていた。  勉強は一生懸命やってきたし、元来の負けん気の強さでスポーツも手を抜かず取り組んできた。
/292ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2627人が本棚に入れています
本棚に追加