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 俺はどんな結果でも“まだまだ”と自分を律し続けた。親の過剰な期待に応えるためなんかじゃない。俺はいつか自分で自分を認められるようになりたくて、真っ直ぐにとにかく努力を積み重ねようと思った。  そういう努力が実を結んで様々な称号やステータスを得たとしても、周りはみんなこう言うんだ。  “浅見はお父さんが国会議員だから”  俺の努力はなかったことにされる。全ては生まれながらにして持っているものだと、親から貰ったものなのだと、そう陰口を叩かれる。  バカだね。そんな言い訳ばかりしてるから俺に勝てないのに。陰口を言う暇があったら勉強すれば? 単語の一つくらいは覚えられるかもよ?  正直、周りは不愉快な人間ばかりだった。  俺に嫉妬を剥き出しにしてくるヤツも、俺の父親との繋がりが欲しくてベッタリしてくるヤツも。  本当の友達を作りたくても、俺のバックボーンが邪魔をする。しがらみなしで俺に話し掛けてくれたヤツも中にはいたのかもしれない。でも、子どもだった俺にそういう純粋な人間とそうでない打算的な人間との区別を付けることは難しかった。  だから俺はあまり人と関わらないようにしていた。別にあからさまに避けるとか、そんな頭の悪いやり方じゃない。何でも微笑みながら受け流し、学校以外での付き合いはしない、そんなものだ。表面上の付き合いさえあれば、何も困らない。
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