6/12
前へ
/292ページ
次へ
 ――――だけど、俺は出会ってしまった。  強くて、優しくて、真っ直ぐな、擦れてない人に。  俺が頼さんに出会ったのは、本当に偶然で奇跡に近いようなものだったと思う。  俺はいつも校舎裏とかでボコられてたんだけど、その日はたまたま他のヤツに見つかって。それがまずいって場所を変えたのがあの路地裏だった。別に俺の家に近い場所でも何でもなくて、アイツらのうちの誰かが隠れてタバコを吸う場所だったとか、そんな話だったと思うけど。  俺はベタな台詞で恐喝されてた。『親が大臣で金持ちだからって調子に乗るな』って。『税金泥棒』とかも言われたな。本当バカじゃねぇの、頭悪すぎってずっと頭の中で罵倒してたね。あまりに陳腐な台詞だったからさ。殴られればそりゃ痛かったけど、バカに抵抗するなんて無駄な力は使う気になれなかった。  少し殴られて少し金を渡せば終わるんだから。  こんなバカたちに抵抗したら俺も同レベルだよ。
/292ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2628人が本棚に入れています
本棚に追加