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 警察になってから初めての早退後、俺はどこにも寄らずに家に帰った。普段なら仕事終わりにコンビニに寄るのが定番なのだけれど、今回ばかりは立ち読みする気も何か食べ物を買う気にもなれなかった。  とにかく早く帰りたい、誰にも会わずに閉じこもりたい、そんな気持ちだった。  他人の視線を感じるのが嫌だった。別に(はた)から見たら何も変わっていないのだろうけど。俺の勝手な被害妄想なのだろうけど。  自分の部屋に帰ると、鞄を投げ捨てて着替えもせずに布団に倒れこんだ。  間違いなく身体は疲れている。  徹夜も含む連日の勤務に、飲み会、そして幾度となく絶頂に達したセックス――――。  20代なんてとっくに過ぎて30代半ばも見えてきた俺には(こた)える。  だけど、そんな身体の疲れに反して眠れず覚醒していくのは、やっぱり精神的なものなのだろう。  考え事を始めると止まらなくなる。その考え事のほとんどを占めているのが浅見で。  好きな人のことを考えれば憂鬱になってしまう。せっかく結城部長と久しぶりに会えるというのに、気分が乗らないどころか会いたくないとさえ思っている。
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