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 “頼さん、頼さんっ……!!”  頭の中で何度もアイツの甘い声が再生される。その度、俺は頭を抱えて瞼をきつく閉じ唸ってしまう。  たぶん浅見は未だに俺のことが好きなのだろうし、半端な気持ちで俺を抱いたのではない。それはわかっているのだけれど。  でも、どうしてあそこまでして抱く必要があったのか。  もしまた告白されたのなら、今度こそ俺はちゃんと逃げずに返事ができたと思う。それを想定して飲み会に向かった訳だし。  告白しても断られると思ったから無理やり抱いたの? どうしてそこまで……?  浅見は賢い人間だ。リスクマネジメントなんて誰よりも得意なんじゃないの? 何が正しいとか、何をすればどうなるとか、想像できるはずだろう。警察官であり大物政治家の息子とあらば、きちんと線引きはできているはずだ。  それなのに、どうして浅見は“何もかも忘れて”と言って俺を抱いたんだろう。  大胆にキスマークまで残して、浅見はその存在を俺の身体にも心にも刻みつけていった。自然と俺はキスマークのある胸元に指を滑らせていた。
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