君が他の誰かを愛していても

７

　浅見の痕(あと)。
　いつまでここに残るのだろう。
　思い出しては駄目なのに。
　俺の肌を甘咬みしては何度も俺の名前を呼んでいた唇――――

　すると突然頭上でスマホが振動したので、俺はビクッとしながら慌てて胸元から指を離した。
　画面を確認すれば、初めて表示される番号と“浅見”の文字。
　一体このタイミングで何の用……？
　何を話せって？　大体、二度と俺に近づくなって言ったのに早速現れやがって。その上電話？　なめてるよな、マジで。
　俺の気持ちなんてわからないんだろう。こっちはもうぐちゃぐちゃだよ。だってさ、好きでもない男に抱かれたんだよ？　嫌なはずじゃないか。それなのに感じちゃった自分がいてさ、もう嫌気が差すんだ。そういうチグハグさに頭がおかしくなりそうなんだよ。

　このまま出ない方がいいと思った。話せる気がしない。
　だけど、スマホを離すことができない。画面から目を離せない。
　このまま切れてしまえばいい。いや、頼むからもう早く切ってくれ。俺が血迷わないうちに。