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「…………どうせ断っても、来るんだろ……? 今日がダメなら明日でも……きっと俺がわかったって言うまでずっと……」
最後の方はわずかに声が掠れた。緊張で口の中がカラカラに渇いていた。
結局、俺が口に出した言葉は浅見の申し出に対する“肯定”でしかない。それを言ってこれからどうなるのか、考えただけで緊張するのだ。
俺だってわかってる。こんなの間違ってるって。
本当は断ればいい。今日断っても明日来るなら、明日も拒絶すればいい。そして明日以降も、ずっと拒絶すればいい。簡単なことだ。
だけど、俺は――――
『…………頼さん。僕たちはもっと話さなくちゃいけなかったんです。お互いを理解できるまで』
「…………一生理解し合えなかったら?」
俺が突き放すような口調でそう言うと、浅見は少しだけ笑った。たぶん、困って苦笑いをしている。
『……死ぬまで、理解してもらえるよう努力します』
俺も思わず渇いた苦笑いを浮かべた。
俺は、たぶんこういう浅見を憎めないのだと思う。
拒絶できないのは、結局俺が浅見を嫌いじゃないから、これに尽きる。
俺はまた誤った選択をしたのかもしれない。
けれど、俺は電話切った後に少しだけ高揚している自分がいることに気が付いてしまった。
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