そのうち結城部長も出勤してきて、強盗事件対策室のメンバーが揃った。結城部長と武川は何やら楽しそうに談笑している。とは言っても、ほぼ武川が喋って結城部長は相槌打ってる感じだけど。
そこに結城部長のコーヒーを出しに戻ってきた浅見も加わって、和気あいあいとした雰囲気になった。いつもならそういうところには積極的に加わる方なのだけど、今はなかなかそういう気持ちにならない。早く浅見がそこを抜けてくれないかな、なんて思ってしまう。
しばらくすると、浅見はまた一礼して部屋を出た。お盆を戻しに向かったようだ。武川も自販機でコーラを買って来るとか何とかって言って席を立った。
久しぶりに結城部長と2人きり。会話はしなかった。元々結城部長が無口で、ちょうど良かった。今は話すどころじゃない。俺のこの妙な緊張感は、結城部長に対してではなくて、浅見に話し掛けるタイミングを見計らっているからなんだろう。俺はもう、迷わない。
浅見が給湯室にお盆を置いてこちらに戻ってきた。これがラストチャンス、かも。俺は背筋を伸ばして、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「あ、あの……」
「柏倉部長」
浅見に先に話し出されてしまった。俺は一旦出かかった言葉を飲み込んだ。
「……どうした? 」
「今日の仕事内容について指示をいただければ……すみません、まだ自分でどのように捜査を進めたら良いかわからなくて」
「あ、そうだよな。今日は捜査報告書の書き方教えるから。そしたら、また被疑者宅の視察に行こうと思ってたんだ」
「ありがとうございます。ご一緒しても構わないのですか?」
「あ、当たり前だろ」
浅見がホッとしたように目尻を下げたので、俺も胸を撫で下ろした。嫌われてはいないようだ。
確かに、今日は浅見を一緒にいられる時間はたくさんあるけれど、できれば公私混同はしたくない。仕事が始まったら仕事のことに集中しなければ、事件の被害者に申し訳ない。だから、できれば今の業務時間外に約束を取りつけたいのだが。
「あ、浅見」
「はい」
「あのさ……」
俺は、意を決して口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!