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 この感じからすると、浅見の推理力は相当なものだろう。俺が言い訳をすればするほど追いつめられていくのは目に見えていた。  俺はほろ酔い気分も相まって、もう逃げることはやめにしようと思った。面倒になったというか、元々酔うと語りたくなる質だからだろう。  駆け引きはやっぱり疲れる。それに、話した方が楽になるような気がした。 「……上司だったの、俺の」 「上司……男ですか?」 「そだね」  案外さらっと打ち明けることができた。隠すのは大変なのに、表に出すのはあまりに簡単だ。自分自身で拍子抜けしてしまうくらいに。  俺が今までにこの気持ちを打ち明けたのは武川だけだ。別に信頼がおける部下だからとかそういうことではなくて、単に武川も同性の上司を好きになって恋人にしているという境遇だったからだ。そういうヤツなら軽蔑も警戒もされないし、誰にも言わずにいてくれると思った。  浅見にこうして打ち明けているのは、酒の力もあるだろうが、浅見の頭の良さならいずれバレてしまうし面倒臭いというのがあった。そして何より、浅見の好きな人もまた、“俺”という男だったから。 「いつから好きなんですか?」 「……いつだろう……6、7年前じゃない?」 「何で好きになったんですか?」 「わかんねぇよ、そんなの。いつの間にかだよ。たぶん、優しい人だったからそういうところだと思うけど」 「その人は、今どこに?」 「転勤したよ。3年前に」
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