「ガラスの靴とカラスの罪」

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購入したばかりのリゾートマンションのベランダからは海が一望できる。 中古で買ったマンションだから、柱に刻まれた傷や暖房器具の古さは多少気になるが、何よりこの眺望には変えられない。 水面には眩しく光が輝き、波は静かに飛沫を上げている。 時折、小さく漁船が通り過ぎていく。 その様子を一羽のカラスが桜の木に止まり、身動きせずに眺めていた。 生暖い風が吹くたびに、淡く儚い花びらは海の青さと溶け合いながら一斉に舞いあがる。
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