ばんそこう

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「引きが弱いのは気合いが足んねーからだよ」と、当時よく友達に言われていたけど──今でもそうなのかな……。  ただあの頃は、悔しくて大声で泣いても、誰かが近くにいて叱り付けてくれた。  呆れられ笑われるばかりで、会社の連中に存在を諦められている今に比べて、あの頃の方が断然よかったと思ってしまう。  それでも、この町の景色が変わっていくように、あの頃のままでとはいかない。  変化に順応して、逞しく生きる人たちがいる。  僕も、不変に立ち向かわなければならない。  握り締めた手を広げ、買ったばかりのフーセンガムを見た。  包みをペリペリと剥がしてみる。  外装をピラッと裏返すと──  そこには、赤インクで“アタリ”という文字が印刷されていた。  ──アタリ。  あぁ、アタリか。
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