店番

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 酒井屋は、小柄で痩せたおばあちゃんが一人で店番をしていた。  一見無愛想で怖そうな人だったけど、僕が自転車でこけて膝を擦り剥いた時、手当てをしてもらった思い出がある。 「しょうがないね。泣くんじゃないよ、歩けなくなるわけじゃあるまいし。これ、ほら、ばんそこう」  ばんそこう──絆創膏のことだ。  おばあちゃん独特の言い方で、「ほれ」と貼ってもらったそれ。  無表情だけどどこか抜けているようなおばあちゃんの、芯の部分にある温かさが感じてとれた出来事だった。  だからこそ、僕は自ずとここに通いつめていたのだと思う。  ──まぁもちろん、お菓子やカードが一番の目的ではあったんだけど。
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