店番

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 ふと、陳列台の手前の方──薄明かりの筋を目で手繰っていくと、ボール紙の菓子入れが見えた。  一つだけ、ぽつんと置き去りにされた懐かしの箱。  それは、コーラガムの菓子箱だった。  ひょいっと中を覗いてみると、包装されたガムが何個か残っているのが確認できた。  一個十円の、駄菓子屋ならではのフーセンガム。  僕はこのフーセンガムが、あまり好きではなかった。  フーセンを膨らませられなかったからだ。  友達にはバカにされるし、ただ味を噛み締めた後に紙に包んでポイと捨てるだけだから、フーセンガムとしての妙味も堪能できない。  遊びこなせなければ面白味が半減してしまう遊び菓子──それを僕は、一つ手に取ってみた。  大人になった今なら、さすがに膨らませられるんじゃないかな──と、そんな期待感を胸に滲ませてみたものの、そもそもこれが売り物なのかどうかもわからない……。  僕は、灯りに染まるガラス戸を見た。  そして、すっと息を吸い込む。 「すいませーん」
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