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「おばあちゃんの頃のお客さんよね?」
そう尋ねられ、あのおばあちゃんの顔を頭に過らせながらはっきりと頷いた。
「はい、きっとそうです」
「おばあちゃんがね……私の母親なんだけど、倒れて入院しちゃってね……私が引き継いでたの。でもね、そろそろ閉めようかって……。寂しいもんでしょ、がらんとしてて」
彼女は──おばあちゃんの娘さんは、店を引き継いでから畳むことになってしまった経緯を話してくれ、空笑いするように僕に問い掛けた。
僕は、何も答えることが出来なかった。
「昨日まで在庫処分しててね、売れ残りは業者さんに回収してもらってたから……」
……と、彼女は陳列台を見渡し、僕の手元に目を留めた。
フーセンガム一つを摘んだ指と、そしてその側にある菓子箱。
「あぁ、一個忘れてた。ふふ、よかったらそれ、全部持ってく?待ってね、袋持ってくるから──」
娘さんは顎でそれらを指しながら、ガラス戸の中に戻るような所作をとった。
「いえ、あの……。コレ買いたいんです。それで声を掛けて……」
慌てて引き止めながら、僕はバッグを足元に置き、ズボンのポケットを探った。
小銭があるか心配だったけど、駄菓子を買うぐらいはあるだろう。
大人になると、お菓子を買うのにあれこれ計算しなくなるものだなと、ふと思った。
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