寄り道のばんそこう

ばんそこう

　帰り際、娘さんはお礼にと言ってみかんを何個かレジ袋に入れて持たせてくれた。

　何度もお礼を言って、僕は酒井屋を出た。

　曲がり角の手前で振り返る。

　見送ってくれた娘さんに、もう一度頭を下げた。

　やがて、あのシャッターも閉まり、看板も取り外される。この光景はもうすぐ見れなくなるのだろう。

　友達と競ったカードゲーム。

　僕は引きが弱くて、好きなキャラをなかなか引き当てられなかった。

　なけなしの小遣いを注ぎ込んでいるのに弱いキャラばかり出て、しかもダブったりして。

　悔しくて悔しくて。

　泣きながら、販売機に蹴りを入れたことがある。

　おばあちゃんにこっぴどく叱られて、結局大泣きして謝ったけど。