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店番
しばらく歩くと、小さなプロパンガスの営業所の前に来た。
看板は古びているが、まだ営業しているみたいだ。
ちょうどこの看板が、いつもの駄菓子屋への目印だった。
この看板の角を曲がれば、駄菓子屋のある細い路地に出る。
──寄り道をしてみよう。
過去へと遡行するように、僕は営業所の角を曲がった。
あの駄菓子屋は、確か“酒井屋”といった。
白地のトタン板に、赤茶色のペンキでそう書かれた看板。
記憶を頼りに、というより、体が覚えている酒井屋までの道。
果たして、店はそこにあった。
二階建て家屋の一階部分。
看板もまだ当時のままだ。
だけど、店先にあったガチャガチャやカードの販売機は一台もなく、シャッターは中途半端に四分の一ほど閉まりかかっていた。
店内も暗く、嫌に寒々しい雰囲気が漂っている。
こんな平日の15時頃──放課後の書き入れ時に休むとは到底考えづらく、いたたまれない思いが去来した。
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