紙の本はオワコン

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 私は前々から、ある本の発売を楽しみにしていた。 それが三日前にようやく発売されたのだ。 実に喜ばしいことである。 私はその本を購入しようとした。もちろん電子書籍でだ。 だが、いくら電子書籍サイトで検索しても、その本はヒットしなかった。 そして衝撃の事実が判明したのだ。  その本は電子書籍化する予定はございません。  出版社に問い合わせた結果がこれである。 な! な! な! そんなことありえるものか! この情報化社会にだぞ!? 私はひどく落胆した。 例えるなら、春に実った果実が大地に落ち、夏、秋、冬、誰にも気づかれることなく朽ち果てるように。 ……純文学ぽい表現をしたかったのだが、見事に失敗してしまったようだ。 聞き流してほしい。  とにかくだ。これが由々しき事態の真相である。 読者諸君はまさかの超展開にひどく驚いたであろう。 さて、ここで私から君たちへ質問しよう。 私はどうするべきだと思う?  …………諦めて紙の本を購入すればよいとな?  はぁーーーー……。 こんな深い溜息をついたのは、中学生のころ授業中におならをしてしまい、それを誤魔化すために「はぁーーーー……、やれやれ誰だい盛大にぶっ放したのは?」と言って真犯人を隠蔽しようとしたとき以来だよ。 そもそもだ。 君たちは人生の中で実に貴重な時間をドブに捨てて、私の主張を聞いたではないか。 改めて言わせてもらおう。  紙の本はオワコンである!  ふぅー、気分も盛り上がってきたな。 なので、私はこれから本屋に行こうと思う。 決して本を購入するためではない。 言わば敵情視察である。 本屋の平台に積まれた大量に売れ残っている本を見て、私はほくそ笑むであろう。 そして確信するのだ、時代はやはり電子書籍なのだと!  余談だが五日ぶりの外出である。 決して引きこもりではない。
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