12 陽の光をアネモネの花に

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12 陽の光をアネモネの花に

「半年前なんだよ。それも10年間、君を護れなかった者達が空いた時間を手分けしてね」  西村危機管理官は、深く心の底から吐き出す如く私に告げた。  それを聞いて、私は言葉を失った。  ズルい。  それを言われたら、何も言えない。  あの時、必死になって私を擁護してくれた皆。  しかし、無情に辞令が降りた。  彼らの申し訳ない顔が私の脳裏に浮かんでくる。  管理官は、また、飲みかけの茶をすすっていた。  そして、一口飲むと、その湯呑をしげしげと眺める。 「なぁ、一条君。警視庁の職員もだいぶ変わってきている。当時、君を護れなかった者たちの手によってね。二度と君の様な者を出すまじと。彼らは、君のあだを討ちたかっただけなんだよ。私はこの件については一切手を出していない。今回、このカードを切らせてもらったのは、本当に偶然だ。私は、無神論者だが、何か、この偶然が必然の様に感じてね。恐らく君を護れなかった者たちは、君にもう一度戻ってきて欲しいと願っているんじゃないかな。だから、この時期までかかったのは、必然じゃないかと思えてね。そろそろ良いんじゃないか? 彼らを許してやっても」  だから、それがズルいというんだ。  私は、そう思いながらファイルを見続けて首を横に振っていた。  この人に涙を見せたくなかったから。 「もう、許しています。いえ、それどころか、初めからあの人たちを憎んだ事なんか一度もないです。皆、必死で私のために動いてくれていたんですね。そう思うと・・・」  そして、小さく呼吸をして私は前を向いた。 「それで、私に何をしろというのでしょうか?」
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