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「小野寺さん、ねえ小野寺さん。」
「花村、ファインダーから目を離すな。ホシが動くかもしれないだろうが。」
「ホシになってくれますかねぇ。」
「俺を信じろ。」
次期幹事長の噂もある大物政治家、黒田。不倫の有力な情報をつかんだ俺は、編集部にいたアシスタントの花村をひっ捕まえ、小雪のちらつくクリスマスの街に出た。
黒田を乗せた車は、ドラマや映画に引っ張りダコの美人女優を途中でピックアップし、ある料亭に入った。
各界御用達の和風料亭。得意客だけを通す宿泊施設もあり、密会に好まれている。高い竹垣で客のプライベートは鉄壁だったが、一つだけ死角があった。由緒ある店であるがゆえに、客を玄関先まで見送るという礼儀作法があるのだ。客が望まなければ控えるが、黒田はエリート官僚でプライドが高い。絶対に見送りはあると確信していた。
「チャンスなんだよ。正面から押さえられれば……。」
料亭の玄関を正面から射貫ける撮影場所に陣取り、その時を待つ。前回来た時から三年経っていたが、幸いな事にここはあの時のままだった。
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