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「………やあ、おはよう」
また今日から、一週間が始まる。
愛用しているスクールバックを肩にかけ、いつも通りの時間に校門をくぐる。昨日のこともありすっかり寝不足のため目を擦っていると、珍しく、彼女とばったりと出会った。
彼女のほうには目元に隈まで出来ていて、しかも意識がはっきりしていないのか、どこかよそよそしい。
「いつもはもうちょっと遅いのに珍しいね。もしかしてちゃんと寝てないとか?」
ただでさえ低血圧な彼女のことだ、体の危険信号は見逃せない。なるべく相手を警戒させないように探りを入れながら、内心、心臓の音が激しくなっていく。
「………あの」
ようやく彼女が口を開いた時、自分の体が固まったような感覚に襲われる。まったく何回見ても、彼女の困ったような表情は見慣れない。
「…………どちらさま、ですか?」
これが彼女との一週間ぶりの、はじめての会話。もう何度目か数えることも飽きるほどの時間が流れても、変化が起きることは一度もなかった。
………それでも、僕は
「………はじめまして、だね」
あの日の月の光を、まだ痛いほどに青い空を
涙を堪えるように見上げた。
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