通り雨

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通り雨

突然降り始めた雨の中、路地裏で息を潜める男がいた。 男の服は薄汚れていて髭も髪も伸ばし放題。ホームレスのような佇まいだった。 男の頬を伝う雨は、薄暗い路地裏に差す微かな月明りで輝いて見えた。男が右手に握った刃物もまた、月明かりをふらふらと反射させて輝いていた。 家路を急いでいるであろう少年が小走りで路地裏に入ってくると、男はさらに息を潜める。 少年は傘も持っていないようで、鞄で気持ちばかりの雨を凌いでいた。 彼は男の存在に気付くことなく、その前を通り過ぎた。 その直後、男は少年目掛けて走り出し、躊躇うことなく少年の背中に刃物を突き立てたのだった。
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