水無月のなかで

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 教室にはやっぱり誰もいなくて、電気もついていないその薄暗さに、どよんとした気持ちが更に重くなる。さっさと目的を果たして帰ろうと、自分の席へ向かった。 「えーっとぉ……あれ、どこや?」  机の引き出しに手をつっこみ、ガサガサと弄るが、一向にそれらしきものに当たる気配がない。 確かに引き出しの中の整理は、日頃あまり行えていないが、プリント一枚探し出せないほどごちゃごちゃではないと思いたい。嫌な予感がツーっと背中を流れた。 「う、嘘やろ…。待てや…」 恐る恐るリュックのの中を再び探ってみると、「嫌な予感」がまさに的中していたことが判明してしまった。 「まじかぁ…」 リュックの奥底に、くちゃくちゃになった課題のプリントがいた。 「うっわぁ…」 あまりの「ツイてなさ」に引いてしまう。こんなにも運が悪い日があっていいのだろうか。しかも自分の不注意であるから、怒りの矛先が自分にしか向けられず、言いようもない苛立ちが体の中でぐるぐると巡った。 その「あまりにも」な状態に思わずフラッと視線を彷徨わせた俺は、今度こそ泣いてしまうかもしれないと思った。 「雨、強なっとるやん…」 先程まで少し鬱陶しく感じるぐらいの小雨が、いつの間にか窓を強く打つほどの大きな雨粒に化けていた。 「もう、ここまで来たらいっそ清々しいわ」 こんな日もあるのだろう。そう割り切らなければいけない日が人生にはあるのだと、そんな悟りを開いた俺は半ばやけくそで窓のそばへ寄って降っている雨を見上げた。その時だった。
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