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バタンっ!!!
勢いよく屋上のドアを開ける。
飛び込んできた景色の中に、黒い人影が一つ。どうやらまだフェンスを超えた様子もなくて、一気に脱力してその場にへたりこんだ。頭から一気に濡れていく。しかしそれに構える程の余裕は、心にも体にも無かった。
ゼーハーと鳴る自分の息を何とか整えようと努力はするが、変に焦った心臓がなかなかそれを許してくれない。
「っ、な、何してんねん!こんな、雨の中ぁ!」
息がもつれながらも、雨に音量だけは消されたらあかんと声を張る。
ボサっと立ったそいつは、声は届いていないかのように微動だにしない。
「おーいっ!聞いとんのかーっ?」
立ち上がり、先程よりも大きく声をだす。息を整った俺の声は、今度は確実に相手に届いたと思う。いくら雨が強くたって、屋上のドアからフェンスまでの距離だ。せいぜい見積っても6、7メートル離れた距離。それに応援団長を任せられたことがある俺は声がデカイ。それは自他共にみとめている。
(やのに、なんでこっち向かんねや)
その立ち姿は、動いていないというのになぜかふわっとしていた。脱力しているというのだろうか。どう言い表していいのかわからないが、とにかく動こうという力が欠けているように感じた。それはイコール、飛び降りる意思というのもないということだろう。そこに安心こそすれど、今度は苛立ちがむくむくと顔を出す。
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