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ある時を境に 会社の業績が一気にに傾き 俺の後輩、鍋島(なべしま)がリストラの対象になった。 リストラの鉾先を 頼りない後輩からなんとか逸らそうと 先輩風吹かせて人事にかけあったら 退職金を上乗せするから……と 俺自身がリストラの対象にされちまった。 つい先月の事だ。 何故だか、ガキの時分から 俺はこんな失敗を繰り返してる。 結婚したばかりの同僚、 高齢の親を看る上司、 受験を控えた子供を持つ先輩。 なんとなく皆、俺を避けるようになった。 今夜は生贄になった俺の送別会。 自分達のテーブルだけがシンとして、 まるで通夜の席だ。 この店の壁には客が ありとあらゆる業種の名刺を貼って行く。 壁全体が名刺で作られた 現代アートさながら。 俺の名刺もこのおびただしい名刺の どこかに貼られている筈だ。 確か入社して間もなく 初めて営業成績がトップになった記念に 先輩に言われて貼ったんだ。 あの時はまさかこんな日が来るとは 思ってもみなかった。 微妙な空気の中、 無理してしこたま酒を呑んだ。 安い酒がキリキリと胃に沁みる。 居酒屋の騒めきだけが、妙に耳に響いてた。 重い空気に耐えかねて 必要以上に明るく振る舞う俺は まるで道化師みたいだった。
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