2-秘密-

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2-秘密-

 結局、運転する彼を満喫できずに、車は境内へと入った。  車から降りて彼に礼を言い、砂利道を進むと、庫裏の玄関で飼われているシロという犬がいる。  シロは臆病で、見知らぬ人が来ると吠える。  私は8才の頃から、お寺に参詣してはシロにおやつをあげて手なずけているのだが、犬の視力はそれほどよくないので、遠目だと吠えられる。  シロの方へ近づいていくと、私の臭いがしたのか吠えるのをやめて、今度はクゥンクゥンとかわいらしい声で鳴くのだった。  私が、今日も持ってきたおやつを二つシロにあげると、シロは尻尾をぱたぱたと左右に振った。  シロと別れて墓場の方へ向かうと、この寺の住職であり、彼の父親が竹箒で掃除をしていた。  「こんにちは」と声をかけると、住職は驚いた表情をして「随分早いな」と言ったので、「草刈りあると間違えて」と答えると、「まあ、ゆっくりしていきなさい。」と仰った。  私は祖母と兄のお墓に手を合わせてから、本堂へと向かった。
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