プロローグ

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 読経を続ける彼の後ろ姿を眺めていると、二女の姉が焼香から戻ってきた。次は私の番だ。姉が隣に座ると、私は立ち上がり焼香の元へと歩いて行った。  焼香は彼の真後ろにある。焼香に近づく度に、彼との距離も図らずも近づく。  三度焼香をあげ手を合わせながら思ったのは、亡き祖母のことではなく、静まらない胸の音のことだった。  自分の座っていた位置に戻り、私は再び祖母に謝った。  ごめんね、ばっちゃん。  でも、思ってしまうのはどうしようもない。
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