プロローグ

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 お寺に通うきっかけを作ったのは、祖母だった。  祖母は子供の頃、戦時中に母親を若くして亡くした。  その後は、たくさんの兄弟姉妹たちと共に叔母の元へと引き取られ、大切に育てられたが、末の弟も間もなくして亡くなった。  母親と弟を不憫に思った祖母は、仏教の道へと足を踏み入れた。  そして、今読経をあげている彼の祖父の時代から、お寺にお世話になっているらしい。  葬式仏教と言われる現代、どこの寺にとっても葬式なんてものはビジネスの一環なのだろうと、最近までは冷めた考えをしていた。  仏教なんて、現代に必要あるの?とも思い、月に何回か行く墓参りも多少面倒くさく感じていたこともある。  でも、なぜだろう。  焼却炉の前で、真摯に手を合わせて経典を読み上げ続ける彼を見ていると、そんな考えも吹き飛んでしまった。  彼はどうしてお坊さんになったのだろうか?  気になって仕方がなかった。
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