26人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれ、いない。」
駅から寺までの距離は遠い。普通なら彼の運転する黒いワゴンが迎えに来ているはずなのだが、無人の駅のロータリーには誰もいなかった。
遅れているのかもしれないと思いしばらく待ってみたが、一向に車は現れなかった。
頭上を鷺が飛んで行く。
電話、かけてみるかな。そう思い私はスマホの連絡先を開き、彼の名前を探した。
受話器のマークを押したら、彼に通じるんだと思うと心臓が高鳴った。なんせ、初めてこの連絡先を使うのだ。
震える指でそっとマークに触れる。耳にスマホを当てると、プルルルという音が聞こえる。私はドクドクと静まらない胸を抑えるために、深く深呼吸をした。
最初のコメントを投稿しよう!