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何回目かのコールオンで、電話は繋がった。
「もしもし?」
彼の声だ。普段とは違う、電話越しの彼の声。耳に優しく響く低音だ。
「もしもし、宮川です。」
「あれ、いずみちゃん?どうしたの?」
「今日って草刈りは... 」
私がそう聞くと、彼は「あれ?ちょっと待ってね~」と言って、なにかを探り出したのか、電話越しにごそごそという音が聞こえた。
「あー、今日は草刈りないよ~。今月は特別に無くなってるんだよ。予定表に書いてある。午後からお講が始まるけど、午前中は何もないよ。」
私は急いで手帳を見た。
そこにはきちんと「草刈りなし」と書いてあった。抜かった。
「いずみちゃん、もしかして来ちゃった?」
いじわるそうに訊ねる声に、私は「す、すみません。今、駅にいます。」と答えた。
「分かった、今からそっち迎えに行くよ。」
彼はそう言い、電話を切った。
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