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頼みすぎたと思うほど多かった料理も、すっかり片付いてしまった。お腹も満たされ、大人は完全に酔って出来上がっている。気がつけば、時計は九時を回っていた。
和哉くんと連絡先の交換もして、だいぶ親しくなった。彼は話しかけられるのが苦手な人だと思っていたが、それは私が勝手に思い込んでいたようだった。話しかければ答えてくれるし、話も広げてくれる優しい子だった。
もうお開きだと言う声に、「ええ~!?まだまだこれからだろ!!」と駄々をこねる宏樹さんを、「そんなこと言ったって、未成年いるんだから!!」と、酔っていてもしっかりものの夏海さんが叱る。すると、「あ、そっか。」と思い出したように宏樹さんが言った。
まるで夫婦漫才みたいだと、自然と笑いが溢れた。
お店のおじさんとおばさんに「ごちそうさま」と挨拶をし、「まいどあり~」という声を背中に私たちは店を出た。
外に出ると、暑い日中とは正反対の涼しい風が心地よかった。空には雲一つなく晴れ晴れとしており、月と星々が瞬いていた。
「綺麗」と自然に声が出た。それにかおりさんが「本当だね」と優しく言った。
いつもよりも星の数が多く感じるのは、外灯が少ないから、暗く小さな星までも見えるからだろう。街で見る星空とはまるで違う空のようだ。ずっと眺めていると、深い闇に吸い込まれていきそうだ。
「そうか?いつこんなんだぞ?まあ、田舎だから都会よりは綺麗に見えるかもしれないけど。」
ぼーっと夜空を眺めていると、いつの間にか隣に真条さんが立っていた。きっと、口をぽかんと開けて、アホっぽい顔をして空を見上げているのを見られてしまったはずだ。少し恥ずかしい。
みなで暫く星空を眺めた。私はその小さな灯りを胸に焼きつけた。この星空に囲まれて育った彼が、少し羨ましく思った。
「さ、帰るぞ~。」
彼の掛け声で、星空から目を降ろすと彼が優しく微笑んでいた。手招きをされて、私は黒いワゴン車に乗り込んだ。
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