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真条さんが「ま、まさしさん!?くれぐれも事故だけは!!!」と言うと、まさしさんは「おう!!わかってるぜ~」と返した。が、車のスピードが増しているように感じた。
山田さん夫妻が「ひぇ~!!」と悲鳴をあげている。私の隣の和哉くんは、冷静に「上には上がいた。」と呟いている。私とかおりさんはお互いにしがみついていた。
外灯の少ない真っ暗闇の田圃道を、ヘッドライトで照らしながら猛スピードで走り抜けていく黒いワゴン車は、端から見るとどんな感じなのだろうか。
そんなことを考えると、少し笑えてしまった。若干ツボに入り肩を震わせて笑っている私を、和哉くんとかおりさんが「気が動転して痙攣してる!!」と、心配そうに叫んだ。
それがまた面白くて、更に笑ってしまう。
前方に電灯の多い駅が見えた。車は相変わらずの猛スピードでそこへ直進していく。そして、急ブレーキをかけ停車した。突然の停止に全員が前につんのめった。
宏樹さんが「タイムは!?」と訊ねると、夏海さんが腕時計を確認し、「...七分弱!!残り三分でゴール!!」と叫んだ。
そして、二人は「あぁあぁあ」と叫びながら、熱い抱擁を交わしていた。まるで映画のワンシーンのようだ。それを額の汗をぬぐいながらドヤ顔で見守るまさしさん。その他は放心状態だ。
「とりあえず、間に合ってよかった。」と私が言う隣で、真条さんが真っ青な顔で棒立ちになっていた。
蛙や虫の音が響く無人の駅のホームに、「お疲れ~」「また今度~」という声がこだました。電車で帰る私とかおりさんと山田さん夫妻は改札を通った。
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